〜ガソリン車&ハイブリッド車の逆転シナリオはあるか?〜
2020年代初頭、世界の自動車産業は「EV(電気自動車)一択」のようなムードに包まれていた。欧州各国や中国は内燃機関(ガソリン車)の販売禁止を相次いで発表し、テスラを筆頭にEVメーカーが市場を席巻。トヨタやホンダといった日本勢が得意とするハイブリッド車(HV)は「過渡期の技術」として片隅に追いやられたかに見えた。
しかし――2024年以降、その構図に変化の兆しが現れている。
そしていま、2025年のこの時点から見えてくるのは、10年後の2035年に、EV一強の時代は終わり、ハイブリッド車が再評価される車社会の「逆転シナリオ」だ。

EV神話の揺らぎ
電気自動車は「エコでクリーン」というイメージを持たれてきた。だが、近年の研究や報道で次のような懸念が浮き彫りになってきている。
- EV車の製造時CO2排出量はガソリン車より多い
特にリチウムイオン電池の生産に伴うCO2排出量が大きく、製造段階での環境負荷が無視できない。 - 再生可能エネルギーでの充電インフラが不十分
EVが「走行中にCO2を出さない」ことは事実だが、その充電に使われる電力の大部分が石炭や天然ガスなどの火力発電によるものであれば、トータルでは「環境にやさしい」とは言い切れない。 - リチウム・コバルトなどのレアメタル問題
採掘における人権問題、地政学リスク、価格の不安定さ…。SDGs時代に逆行する側面も指摘されている。
さらに最近では、イーロン・マスク氏とドナルド・トランプ大統領の対立も話題に。マスク氏はバイデン政権のEV推進政策を後ろ盾にテスラの地位を築いたが、トランプ政権になりしばらくは蜜月が続いたがここへきて決裂。トランプ大統領の「EV優遇政策の撤回」が現実味を帯びる。もしマスク氏がトランプ大統領に敗れるとすると、それはテスラだけでなく、世界のEV市場に冷水を浴びせる可能性がある。

ハイブリッド車の“静かな逆転”
一方で、ハイブリッド車はどうか。エンジンとモーターを併用することで燃費を大幅に向上させ、都市部でも郊外でも使い勝手がよい。インフラに依存せず、ガソリンスタンドさえあれば走れる――実用性・経済性・環境バランスの“三拍子”がそろっている。
かつては「中途半端」と見なされていたこの技術が、実は現実的なカーボンニュートラルへの橋渡しになるという評価が再浮上している。
- トヨタのようなHVの技術蓄積がある企業が再び脚光を浴びる
- 新興国ではEVよりHVのほうが普及に適している
- 日本政府も「多様なパワートレインの共存」を前提とした政策へシフト
「EVこそ未来」という前提を疑え
2035年、世界が求めるのは「クリーンな理想」よりも「持続可能な現実」かもしれない。
極端なEV推進ではなく、地域や用途に応じたベストミックスが鍵となる時代へ――。そしてそのとき、「ガソリン車 → EV車」の一方通行ではなく、「EV 車→ ハイブリッド車」への逆転現象が起きている可能性は大いにある。
逆転トレンド研究所では、この動きを「EVバブルの軟着陸」と捉え、トヨタをはじめとする日本メーカーの再浮上に注目している。
まとめ:逆転ポイントはここだ!
観点 | EV | ハイブリッド車 |
---|---|---|
製造時の環境負荷 | 高い | 低い |
走行時のCO2 | ゼロ(ただし発電次第) | 極めて低い |
インフラ依存度 | 高い(充電網) | 低い(ガソリンでOK) |
実用性 | 長距離不安・充電待ち | 高い・すぐ乗れる |
コスト | 高い(補助金依存) | 安定 |
政治的影響 | 大きい(政策に左右) | 小さい |
2035年の車社会はどうなっているか、逆転トレンド研究所の興味は尽きない。
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