渋野日向子選手が、なかなか勝てない、どころか予選落ちが続いている・・・
2019年の全英女子オープンを制し、「スマイルシンデレラ」として一躍世界の頂点に立ったあの頃を知っているだけに、現在の姿にもどかしさを感じているファンは少なくないだろう。
しかし、もちろん我々は「渋野日向子はこうすべきだ」と言える立場にない。
ただ、
もし、自分が渋野日向子だったらどうする?
と想像してみるのは自由だ。
アメリカでもう一度挑戦するのか。
日本に戻って、JLPGAの女王を目指すのか。
それとも、どこかで区切りをつけて、次の人生へ進むのか。
もちろん「引退」も含め、これは渋野選手本人が語っている選択肢でもない。
あくまで「自分だったらどうするか」を考えるための仮想の話だ。
今回は「おっさん目線・トバリ」「うるさい理論派・フカボリ」「女子ゴルフリサーチャー・カタヒラ」、そして「メンタルアナリスト・ホリシン」の4人で、渋野日向子選手の「次」を考えてみたい。
「渋野日向子は本当にもうダメ」なのか?

いやあ、シブコにはもう一回勝ってほしいよ。
2019年の全英女子オープンで優勝したときの、あの笑顔。
オレたちオッサンは、まだ忘れてないからね。

いきなり思い出話ですか(笑)。
しかも「もう一回勝ってほしい」ということは、
勝てなくなった選手みたいな言い方ですね。

実際、なかなか勝てないじゃない。
それどころか予選落ちばかりだ。

ただ、そこは少し冷静に見た方がいいと思います。
2026年9月時点のRace to CME Globeランキングは90位台。
決して本人が望んでいる位置ではありませんが、
すぐに「アメリカではもう無理」と決めつけるような位置でもありません。
メジャーでも上位に入っていますし。

そうなんですよ。
全英を勝った2019年の渋野と比べるから、「落ちた」ように見える。
でも世界最高峰のLPGAで戦っている選手なんだから。
比較対象が高すぎるんだと思います。

そう、そこが今回のテーマのポイントだと思います。
一度ものすごく高いところまで行った人は、その後が難しい。
「以前の自分」が壁になるんですよね。

相手じゃなくて、自分が壁?

そうです。
「あの頃はできた」
「あの頃は勝てた」
「あの頃の自分に戻りたい」
これは結構つらいです。
そこで今回は、僕たちが勝手に渋野日向子選手になってみましょう。
もし自分が渋野日向子だったら、これからどうするか。
選択① このままアメリカで戦い続ける

まず一番現実的なのは、アメリカでの挑戦を続けることですね。
現時点のランキングなら、来季もLPGAでプレーできる可能性は残っています。まず今季最後まで戦って、自分の立ち位置を見極める。
それから考えても遅くありません。私ならそうします。

オレがシブコだったら、やっぱりもう一年やるな。
だって、ここで帰ったら悔しくない?

出ました、「悔しいから続ける」(笑)。
それが一番危ない考え方かもしれない。

なんでだよ。

「続ける」こと自体が目的になってしまうから。
何のためにアメリカで戦うのか、そこが明確じゃないといけない気がする。
世界一を目指すのか。
もう一度メジャーを勝ちたいのか。
それともアメリカ本土で優勝したいのか。
そこを決めないで、「悔しいからもう一年」は違うと思うけど・・・

私もそこは大事だと思う。
「心理的資本」の「Hope」には、「目標(Will)」と、
そこへ到達するための「道筋(Way)」という考え方があります。
一つの道が行き止まりになったら、別の道を探す。つまり、
目標は簡単に諦めない。でも、やり方には固執しない。
これが「Hope」の意味です。

だとすると「アメリカに残る」という選択でも、
中身を変える必要がある?

そうです。
スイング、コーチ、練習方法、試合への入り方、年間スケジュール・・・とにかく何かを変える。
壁にぶつかっているのに、同じ助走、同じ跳び方で何度も壁に向かっていっても疲弊するだけですから。

つまり選択①は、ただ「アメリカで頑張る」じゃなくて
「アメリカで、やり方を変えて頑張る」ということかな。

なるほど。「頑張れ、シブコ!」だけじゃダメなのか。

オッサン目線はそれでいいんです(笑)。
どうせ何か変わっても気づかないでしょ?
選択② 日本に戻って「JLPGAの女王」を目指す

実はオレはこれも見たい!
日本に帰ってきて、年間女王を狙うシブコ。盛り上がるぞ。

ただし、「日本に戻れば簡単に勝てる」というほど現在のJLPGAは甘くないですよ。若い有望な選手が次々に出てきています。

そこなんですよ。「アメリカでダメだったから日本」という発想なら、
これも違うと思うなあ。
でも、「次は日本で新しい目標を作る」なら、まったく意味が違う。

私もそう思います。
ここで「レジリエンス」という言葉を考えてみたいと思います。
「レジリエンス」というと、「失敗しても元に戻る力」と理解されることが多い。
でも必ずしも、元の場所や元の目標に戻る必要はない。
環境を変えて、新しい自分を作り直すことだって「レジリエンス」なんだ。

アメリカから撤退したら「逃げた」って言う人もいるだろ?

いるかもしれない。河本結選手は結構言われましたね。
でも、他人がどう評価するかと、自分の人生の選択は別です。
「アメリカツアーで活躍すること」だけを成功と定義してしまったら、
選択肢は一つしかなくなる。
でも、「もう一度、日本で一番強い選手になる」という新しい目標を作った瞬間、
別の道が生まれる。
河本結選手はその通り日本で復活しましたから。

2019年の渋野日向子選手を再現するのではなく、
「渋野日向子の第2章」を始める。ということですね。

その通りです。
人は壁にぶつかったとき、つい「どうすれば壁を越えられるか」だけを考える。
でも、「そもそも、この壁を越える必要があるのか?」と考えてもいい。

隣に別の道があるかもしれない。

おお、今日は珍しくフカボリがちょっといいこと言った。

「珍しく」は余計です。
選択③ 30歳を一つの区切りにする

これは絶対嫌だなあ。まだ27歳だろ。引退なんて早すぎるよ。

もちろん、渋野選手本人が「30歳で引退する」と言っているわけではありません。
あくまで今回の仮想の選択肢ですね。黄金世代もアラサーになりました。

でも、「いつまでやるか」を考えること自体は悪くないと思うけど。
プロスポーツ選手なら、誰にでもいつか来る話だから。

私はむしろ、ここがメンタル的には一番面白いと思っています。
「辞めないこと」だけが勇気なのか。という捉え方ですよね。

でも、みんな諦めるなって言うじゃない。

私は「諦めないこと」がいつでも正しいとは思わないです。
続ける勇気ももちろんある。
でも、「ここまで」と自分で決める勇気もある。それは敗北とは限らない。
最近では錦織圭選手の引退がそうだったと思います。

なるほど。じゃあ例えば「30歳まで」と自分で期限を決めたら?

逆に思い切ってできる可能性があります。
「あと何年できるんだろう」という漠然とした不安が、
「あと3年、思い切りやろう」に変わる。

終わりを決めることで、現在に集中できる。

そうです。「いつか終わる」と思うことと、
「ここまでやる」と自分で決めることは、心理的にはかなり違う。

でも引退したら、シブコは何するんだ?

オッサンが心配することじゃないです(笑)。

解説者なんかいいと思うけどな。あのキャラクターなら面白いぞ。

指導者、解説、ゴルフ界での普及活動など、競技者以外にもいろいろな関わり方はありますね。

大切なのは、「プロゴルファーを辞める=ゴルフ人生が終わる」ではないということ。キャリアを一つ終えることと、人生を諦めることはまったく違いますから。
4つ目の選択肢はないのか?

さて、3択ですね。
①アメリカで続ける。
②日本に戻る。
③どこかで区切りをつける。
ホリシン先生ならどれ?

うーん……。私なら、もう一つ選択肢を加えます。

おいおい。タイトルが「3つの選択」なんだから、勝手に増やすなよ。

まあまあ(笑)。で、4つ目は?

「何のためにゴルフをするのかを、もう一度考える」かな。

……それって、選択肢なの?

そうですね。選択肢というより「選択のための心の整理」かな。
①②③を決める前に必要なことだと思うんだけど。
アメリカに残るか。
日本に戻るか。
引退するか。
これは全部「行動」の選択ですよね。
でも、その前に「心」の選択があるのではないでしょうか。
自分は、これから何を目指したいのか。

2019年の自分に戻りたい、ではダメなのかな?

それが本人の本当の目標ならいいです。
でも過去の自分を追いかけ続けるのは苦しい。過去は更新できないですから。
だったら、「これからの渋野日向子は何を目指すのか」を考える。
もう一度メジャーを勝ちたい。LPGAで勝ちたい。日本で年間女王になりたい。
あるいは順位や勝利ではなく、「自分が納得できるゴルフをしたい」でもいい。
目標が変われば、選ぶ道も変わる。

つまり、「どこでプレーするか」を決める前に、
「なぜプレーするのか」を決めるってこと?

私はそれが一番重要だと感じます。
壁は「越えるもの」とは限らない

しかしさ。スポーツの世界では「壁を乗り越えろ!」ってよく言うよな。

「壁をぶち破れ!」とか。

壁に負けない方法はそれだけじゃないと思うんです。
壁にぶつかったら、
越えてもいい。
壊してもいい。
迂回してもいい。
別の道へ行ってもいい。
時にはその壁の前で立ち止まってもいい。
大事なのは、
「壁を越えること」ではなく、「自分はどこへ行きたいのか」を見失わないこと、なんじゃないかなと。

そう考えると、今回の話は渋野選手だけの話ではなくなりますね。

そうなんです。仕事でも人生でも、「このまま続けるか」
「環境を変えるか」「もう辞めるか」と迷うことはある。
そんなとき、僕たちはすぐ「どれが正解か」を探してしまう。
でも、その前に一度だけ問い直してみる。
「自分は、そもそもどこへ行きたかったんだっけ?」
そこから考えてもいい。
あなたが渋野日向子だったら、どうする?
アメリカに残って、もう一度挑戦する。
日本に戻って、新しい目標を作る。
どこかで区切りをつけて、次の人生へ進む。
どれが正解かは、外から見ている私たちには分からない。
そして、本当の答えを出せるのは渋野日向子選手本人だけだ。
だからこれは、渋野日向子選手の将来を決める話ではない。
むしろ私たち自身への問いなのだ。
うまくいかない。
頑張っているのに結果が出ない。
かつてできたことが、できなくなった。
そんな「壁」の前に立ったとき――。
あなたなら、どうするだろう。
続けるか。
場所を変えるか。
区切りをつけるか。
それとも、その前に、
「自分は何のために、ここまでやってきたんだろう?」
と、もう一度自分に問いかけてみるか。
もし、あなたが渋野日向子選手だったら――。
どんな道を選びますか?
メンタル分析:メンタルアナリスト/ホリシン(PsyCap Master 心理的資本開発指導士)
「心理的資本」や「レジリエンス」をテーマに「ホリシンblog」を運営
▶ホリシンblogはこちら👇



